VOAというアメリカのニュースサイトで、ちょっと前から読みたいなと思っていた“Man with a Pan”(フライパンを持つ男)の紹介記事がちょうど出ていたのでざっくり和訳してみました(かなり意訳してあります)。料理をする父親たちのエッセイ集です。んー、面白そう。
——————————
男達の進化-パンを稼ぐ人からパンを焼く人へ
家族のために料理をする24人の父親によるエッセイ集
外で働いている母親が増え、多くの父親が家族のために料理をするようになってきている。
ニューヨークの編集者、漫画家であるジョン・ドノヒューもその一人だ。
ドノヒューは、稼ぎ手(bread-winners)ではなく料理をする(bread-bakers)という男性の役割を記録にとどめておきたいと考えた。
そこで彼は24人以上の父親、キッチンに立っている作家やシェフといった人々に、執筆協力を依頼した。その本が”フライパンを手にする男:家族のために料理をするお父さんたちのキッチン大冒険”である。
初めて父親になったとき、ドノヒューは新しい仕事を見つけた。
「僕は妻と赤ちゃんのために料理を始めたんです。それはとっても楽しいことでした。」
ドノヒューはそういう父親が自分一人ではないと知って驚いた。
この『フライパンを手にする男』には、作家やシェフ達による34のエッセイが収められている。ニューヨークタイムズのフードライター、マーク・ビットマンもその一人だ。ビットマンが現在の仕事に就くまでには長い道程があった。
ドノヒューはこう語る。「結婚して子どもを持ったとき彼はタクシーの運転手だったんです。彼はちょっと変わった種類の仕事をしていました。そして彼は料理をはじめました。これらのことが彼の最初の本を出すことに繋がり、またライターとしての一歩になったんです。」
「スティーブン・キングはメイン州に住んでいた頃、彼の妻が味覚を失い料理への興味を一切失ったことから料理を始めました。彼は家族に少しでもましな食事を食べさせたくて、それでキッチンに立ったのです。彼は電子レンジや他の基本的な器具を使う際は物事をシンプルにすることと述べています。これが彼のモットーなのです。彼は素晴らしいアドバイスを述べています:『キッチンを燃やすな』」
ガーナ生まれの小説家、モハメッド・ナセフ・アリは、子ども時代の母のキッチンの思い出がきっかけだったと語る。
「私はハウサ族のムスリムコミュニティで育ちました。私たちのコミュニティでは男性がキッチンに立つのは物凄く眉をひそめられるような行為でした。しかし母は料理している間、私がキッチンを歩き回ることを許してくれていたのです。」
料理とはクリエイティブなものだとアリは強く感じている。
「実は料理と執筆活動を比べてみたことがありますが、全くと言っていいほど同じなんですね。物を書くときは真っ白な、空白のページから始める。料理をするときは空っぽの鍋を前にして、料理を作るためにお鍋に何を入れようか、何を一緒に混ぜようかとゼロから考え始めるわけです。」
旅行作家のジャック・ヒットもこの本に寄稿した一人だが、彼は料理のクリエイティブなプロセスを次のように言い表している。
「料理を始めて分かることのひとつは、レシピに従うことは単にカップやスプーンで計量するということではないんですね。それはもっとずっと大きなこと、もっと抽象的で難しいことです。書かれているのは極めて最小限の内容で、でもそこに文字として書かれている以上にもっとずっと多くのことを意味している。ある意味ガーデニングや運転と似ているかも知れません。それは第二の天性、本能的なものになります。」
ヒットは16年以上にわたる経験で料理の腕を上げてきた。その中で彼は家族の更なる素晴らしい絆を見つけたのである。
「ふと、それまで椅子に座らされて僕のすることを見ていた子どもが、とても参加したがっていたんです。そこで僕が次に知ったのは、僕はアシスタントを得たということでした。それから数年経って、また別のアシスタントが増えました。僕らはキッチンでいろんな実験をしてみていますが、そこにはいつも僕ら三人と妻がいます。そして僕ら家族四人がキッチンで料理をすることが次第に当たり前になり、またそのことが家族としての繋がりを深めています。」
マーク・クーランスキー(作家、料理家、パティシエ)は、誰にでも料理は出来ると話す。
「料理というのはあらゆるものに似ています。いつでも上手くなることが出来ます。料理が出来ないという人を知っていますが、何故出来ないのか理解できません。それはちょうどどんなにやってみても文が書けないという人と遭遇したかのようです。僕には彼らがどうして出来ないのか分かりません。もし話せるなら何故書けないのでしょう?それと同じでもし食べることが出来るなら、どうして料理できないのでしょうか。」
クーランスキーは料理をしたいと思っている男性に次のようなアドバイスを送っている。
「シンプルにやりましょう。良い材料を買ってかつ極めてシンプルに料理をしさえすれば、必ず素晴らしい料理が出来上がります。」
この本を編集したドノヒューは、需要が高まるにつれ、また社会がもっと「フライパンを持つ男」を受け入れるようになっていった時、更なる多くの父親達が料理に参加するだろうと期待している。
——————————
・元記事:Book Chronicles Men’s Evolution from Bread-Winners to Bread-Bakers